中卒フリーライターほぼ無職。

在宅Webフリーライターaoikaraの日常ブログです。

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anone 第2話 ネタバレ 母とか娘とか男とか女とか

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「あのね」って言わなくなっちゃったaoikaraです。いや、あんまり使わないかな、そもそも…。というわけで今回のテーマは…

 

anone 第2話 ネタバレ

 

です。

※個人的な感想なので辛口なコメントを含みます。
※ネタバレもしていますので、まだ内容を知りたくない方はドラマを見てからどうぞ。

 

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第2話 あらすじ・ネタバレ

世界の裏メニュー

「カレーは辛い。辛いからうまい。人生もまた同じ」

 

そう話すのは、自分が持つカレー屋を閉店したばかりの持本舵(阿部サダヲ)。突然やってきた女性客の青羽るい子(小林聡美)に話しかけている。「今ではそういう解釈をしている」と舵は続ける。そして、自分の過去話をする。

 

カレー屋はもともと父親の店で、受け継いだものだと。3年前にフランチャイズに加盟したら、なぜか近くに同じチェーンの店ができてしまった。店を担保に本社に渡すことになり、乗っ取られてしまったのだと。

 

「おでん食べたいな」とるい子は言い出す。舵は戸惑うが、るい子は焼きうどんを作ってくれたことを挙げる。舵は「あれは奇跡!」と言うが、るい子は「あとどんな奇跡があるんでしょう?」と引き下がらない。

 

お好み焼きでも良いとるい子が言うと、舵は冷蔵庫から山芋を見つけてしまう。結局、舵はお好み焼きを作る。それもおいしかった。

 

「結局こういうことだと思うんですよ」とるい子は言い出す。「この世界には裏メニューってものがあるんです」と。二人で見た、お金を燃やしていた女性のことも裏メニューだと言う。るい子は続ける。

 

「世の中には表に出て来ないお金っていうのがあって、それってつまり何が起きても警察に通報されないってことです」真面目にるい子は言う。「警察に捕まんなきゃ泥棒してもいいってことはないですよね」舵は戸惑うように笑いながら返す。

 

「持本さんがこのお店を取られるのはそれですよ?警察に捕まらない泥棒を持本さんはされたんです」るい子は指摘する。舵はそれは自分がちゃんとしていなかったからだと返すが、「いや違います」とるい子はきっぱりと言う。

 

「世の中なんて、どっかのバカがついうっかり倒しちゃったドミノ倒しでできてるんですよ。 ちゃんとしてようがしてまいが、並んじゃったら負けなんです」そしてるい子はお好み焼きを食べながら、「裏メニューの方がおいしいんです」と述べる。

 

気になること

その話題に挙がっている、お金を燃やしていた女・林田亜乃音(田中裕子)は自宅で一人テレビを見ていた。天気予報の中継がされていて、通りかかる人をじっと見ていた。

 

今日のできごと

辻沢ハリカ(広瀬すず)は、カノンこと紙野彦星(清水尋也)と今日もチャットで会話。彦星の病院の前にハリカはいた。それでも会うことはなく、チャットで話す。ハリカはティッシュ配りをしていたときの同僚で、寿さんという人の話をする。

 

その人は肉まんをポケットに入れていて、ティッシュと間違えて肉まんを渡してしまったらしい。相手は食べてくれて、口を拭いてくださいとティッシュを渡したそうだ。「僕の名前がめでたいからって、僕だっておめでたい奴だと思わないでくれよな」が彼の口癖だった。

 

そんな話を彦星はとても楽しそうに聞く。そして、今日も一日が始まる。ハリカはスマホで「林田印刷所」を調べて、地図を見ている。

 

人が抱えている悲しみ

亜乃音は花房法律事務所の事務員をしていた。事務所には、所長の花房万平(火野正平)がいる。若い弁護士(和田聰宏)がやってきて、「何依頼断ってんだよ!」と万平に怒っている。

 

「刑事事件はやらないの」と万平は離婚調停の案件をフロッピーで手渡す。思い通りにいかないことに加えて、古くさいやり方に腹を立てた若い弁護士は、事務所の物を蹴ってぶち切れている。

 

亜乃音は気まずそうにしながらも、何事もなかったかのように「お疲れ様でした」と言って帰宅。いらだちを抑えられない若い弁護士は、亜乃音のことを「辛気くさい」と言う。

 

万平はその一言を聞くと、ゆっくりと若い弁護士に向き合い、そこにあった物を思いっきり投げつける。

 

「やめろやめろ!あんな人様の秘めた悲しみを辛気くさいなんて片付ける奴は弁護士の資格ねえよ!」

 

万平が怒鳴りつける。若い弁護士は怯み、「何だよ、秘めた悲しみって?」と聞く。亜乃音は15年前に19歳の娘が失踪したそうだ。生きていることはわかっている。天気予報を見ていたら、たまたま映り込んでいたらしい。でも、どこにいるかはわからない。

 

「そういう15年を彼女は生きてきたんだよ」

 

取引

ハリカは道端で待ち伏せしていた。その相手は…歩いてきた、亜乃音。「あの」とハリカは話しかける。亜乃音もハリカが誰なのか気づいた。しかし、ハリカはぼそぼそと声を出すだけで本題を話さない。周りをきょろきょろと見回し、人目を気にしているのか。

 

「まいっか」と言い、「これ、こないだのあれのやつなんですけど」と言って、ハリカは保冷バッグに入っていた1万円札を2枚出す。亜乃音は奪い取ろうとするが、ハリカはさっと手を縮ませて返さない。

 

「なんで二枚とも同じ番号なんですか?」

 

その答えを聞くために、ハリカは亜乃音の家を訪れることになった。ボロボロの機械があり、しばらく動かしていないのか布がかぶせられていて、ハリカはほこりで咳き込む。物にぶつかって転んだりもした。

 

ハリカが機械について聞いても「勝手に触らないで」と亜乃音は警戒心を露わにしている。機械がたくさん置いてある場所の机の前の椅子に座り、二人は向き合う。ハリカは帽子を脱ぐ。

 

「辻沢ハリカです」と自己紹介。「何のご用でしょうか?」亜乃音が聞く。それでもハリカは部屋の電気をつけたりと、なかなか話を進めない。

 

ハリカは1万円札を2枚取り出し、「取引しようと思って来たの」と言う。

 

「私をここで働かせてください」

 

「私はよく働きます。お金もらえるなら何でもします」とハリカは言う。「ここはもう営業してないの」と亜乃音は答える。「何を勘違いされてるのかわからないけど、うちはただの印刷所で」「ただの印刷所じゃないですよね?」

 

ハリカは1万円札を見て、番号が同じことをもう一度言う。亜乃音はお金が欲しいのかと、自分の1万円札2枚と交換するように言うが「待って」とハリカに止められる。このお札は透かしもちゃんとある。でも、「なんか違う」とハリカは言う。

 

「わかったのは」と言って、お札をばっと掴む。「持った感じが違う」と言う。「目は騙されたけど手は気づく。この一瞬の指先で、あっ違うってわかるんだよ。暗いところで知らない人と手をなんかつないでしまったみたいなんです」と。

 

「偽札ですか?」ハリカが聞く。
「偽札でしょうねぇ」亜乃音が答える。
「ふふ…やっぱり」とハリカは不器用に微笑む。

 

ハリカはこの機械で印刷したんじゃないのかと、じっくりと機械が見る。亜乃音は「あなたと同じ。私は見つけちゃっただけ」と亜乃音は言う。床下から出てきた、夫の仕業だと。そして、その夫はもう死んだと。

 

お札どころかチラシ1枚さえも印刷できないと、本物の1万円札を差し出して「諦めて」と亜乃音は言う。しかし、ハリカは引き下がらず、「機械の動かし方さえわかったら…」としぶとく言う。

 

「お金を印刷するのは犯罪ですよ」と亜乃音はハッキリと言う。通貨偽装で刑務所に入ることになると。「お金を使った後なら、刑務所に入って良い」とハリカは言う。「お金がいるの?」亜乃音の問いかけに、ハリカはお金を作ってその後捕まっても亜乃音のことは警察には言わないと、たどたどしく言う。

 

亜乃音は呆れたように「宝くじを買いなさい。夢を買うの」と諭す。ハリカは「夢はいらない」と答える。亜乃音はほとほと疲れたように、冷たく「帰って」と告げる。

 

意外な収穫

ハリカはキャップを被り、帰り支度をしているように見えた。が、出口には行かず、部屋の奥へと入っていく。そして、亜乃音が偽札を見つけた床下に手を突っ込む。

 

亜乃音は「いい加減にしないと警察!」と言いつつも「は、呼べないけど…」と続けて…。ハリカは黒いポーチを手にしていた。その中にはデジカメが入っていた。ハリカが中身を見ると、50代くらいの男(木場勝己)と30代くらいの女性(江口のりこ)が映っていた。

 

亜乃音はその写真を見ると「待って…」と小さくつぶやく。「なんで?」と小さく続けて。ハリカが指をさして人物を聞くと、男性は亜乃音の夫・京介だと言う。隣に映っている女性を見つければ、偽札についてわかるかもとハリカは言う。すると亜乃音が

 

「その子は私の娘。私と夫の娘です」

 

と言い出した。亜乃音は老眼をかけて、デジカメの写真をよーく見ている。「優しい顔になったかな」と亜乃音は言う。「ねえ、玲、優しそうな顔してるでしょ?」とハリカに話しかける。

 

「ん…言ってもわからないか。玲の元の顔知らないもんね」と亜乃音は独り言のように言う。「もう少しね、違ってたの」と。「楽しそうに笑ってますね」とハリカは言う。写真の中に映る京介と玲は笑顔だった。亜乃音もうれしそうにしている。

 

京介と玲がラーメン屋を訪れた写真もある。「どこのラーメン屋さん?」と亜乃音が言うと、ハリカはデジカメでズームアップして「わかるかも」と言う。

 

ドミノ倒しな人生

舵はカレー屋にいて、柄の悪そうな男と話している。書類に印鑑を押すように、優しく促されている。

 

そこにるい子がやってきた。舵は男を西海(川瀬陽太)君と紹介し、小中高の同級生だと言う。店を引き渡す手続きをしていると言う。舵が読む前に、印鑑を押すようにと西海が再度言う。るい子は「ちゃんと読んだ方がいい」とはっきりと舵に言う。

 

舵は言われた通り、書類にしっかりと目を通す。通しながら、西海が話しかける。今までに直接目撃した中で最も怖かったことは何かと。西海は北海道に行ったとき、目の前で“シャケが熊を襲っている”ときだと答えて、舵も愛想よく笑いながらうなずいている。

 

「あの~」とるい子が聞く。「熊がシャケを襲ったんですよね?」西海の間違いを指摘するようにるい子が言う。「シャケが熊を襲ったんです」と西海は言い直さない。「シャケは時に熊を襲います」舵もフォローするように言う。

 

「そういう関係?」とるい子は何か納得したかのように言う。フランチャイズを頼んできたのも西海だとしり、「あー…」と察したように声を漏らしている。

 

舵は印鑑を押すのをためらい、2、3日待ってほしいと西海に言う。西海は立ち上がり、店の中をぶらぶらと歩きながら言う。「ちょっと10分だけ寝るって言って、ちゃんと10分で起きた奴いる?」と。

 

「目覚ましスヌーズする奴は、人生もスヌーズするんだよな」そう言って、舵の父親が描かれている皿を落として割る。「はい押して!今押して!」脅迫するように大声で西海が怒鳴る。

 

声を上げたのはるい子だった。「かわいそうに、こんなシャケと熊の区別もつかないような人にこんな人生言い様にされて」そう言いながら、西海が持ってきた書類をビリビリと破り捨てるるい子。そしてるい子は店を立ち去り、舵が追いかける。

 

川の上の橋に来て、るい子は「悔しくないんですか?」と舵に言う。「ずっとこういう感じなんですよ。こういうもんだと思って生きてきたし…」と舵は答える。「お店を取られない方法があるんです!」とるい子は言う。「裏メニューですが、でも…」舵は言葉に詰まる。

 

するとるい子は何かを舵の手に握らせる。それは100円玉だった。「これ、捨ててください」とるい子は言う。「なんで、捨てられないですよ」舵が答えると、るい子は100円玉を奪い取り、振りかぶって川に向かって投げ捨てる。

 

「今、ドキドキしませんでした?」るい子は聞く。「たった100円でこんなにドキドキできるんです。あの女が燃やしてたのは何百万っていうお金ですよ。一万円札をあんな落ち葉みたいに焼いて…。裏に何もないってことはないでしょ」

 

「あるんですよ。 ドミノ倒しに並んでいる人間には理解できない何かが。」るい子は続ける。

 

「知りたいと思いませんか?手に入れたいと思いませんか?このまま並び続けてはじき飛ばされるの待つんですか?社会からひどい目に遭わされた人は、死ぬ前にすることがあるでしょ!怒るんですよ!シャケだって時には熊を襲うんでしょ?

 

そう言って舵に100円玉を握らせる。舵はそれを思いっきり投げた。ポチャンと川に落ちる音がして、「はあっ」と舵が大きく息を吐いて「なるほど!」と声を出す。「今なんかドキドキして気持ち良かった」舵は憑き物が落ちたような笑顔になっている。

 

舵とるい子は、二人で次々と川にお金を投げ捨てる。

 

娘の行方

亜乃音とハリカは車で写真に写り込んでいたラーメン屋を訪れる。客は男性(すわ親治)が一人。玲が頼んでいたと思われる、どっさりもやしラーメンを2人前頼む。ラーメン屋の店主の男(髙橋洋)が妙にニヤニヤとしていた。

 

ハリカは「んふふ」と笑い、「なんかいいですね」と言う。「玲ちゃんと同じ物食べるの」と言うと、亜乃音は「一緒に食べるわけじゃない」と答える。

 

「怜ちゃんって…怜ちゃんのこと?」と突然店主が聞き出す。夫と映っている玲の写真を見せると、からからっと笑い「怜ちゃんだ」と店主は言う。

 

店主によると、以前はよく、息子を連れて来てくれたお客さんらしい。今は県道沿いのガソリンスタンドでシングルマザーとして働いていると。離婚してけれど、反りが合わない母親がいるから、実家には帰りたくないと話していたと。亜乃音はなんとも言えない表情で聞いている。

 

父親とは仲が良かったらしいと、3人で出かけていることもあった。客も「親父さん、見ないねえ」という言葉に店主も同意する。

 

亜乃音とハリカのどっさりもやしラーメンができた。「んふふ」ハリカは笑って、ラーメンを食べる。

 

引き留める心

 暗くなり、車で印刷所に戻ってきた亜乃音とハリカ。ハリカは車に帽子を忘れて、亜乃音に手渡してもらっている。

 

ハリカは帰宅しようとする。亜乃音に家を聞かれて、ネットカフェに寝泊まりしていることを明かすハリカ。「あ、それで、お金」と亜乃音は納得したような口調で言う。「お金もういいの?」ハリカは顔を伏せて「じゃ」と帰ろうとする。

 

亜乃音は止めるために出したのか、サヨナラと手を振るために出したのか、その手をもどかしそうにしまい込む。そして、「ハリカちゃん」と声をかける。「今夜は泊まっていったら?」と。

 

家に入り、亜乃音は自分の寝間着をハリカに貸す。少し驚いた表情になるハリカ。お風呂用のタオルももらい、さらに驚いた表情を見せるハリカ。入浴中、亜乃音はお風呂の設定温度が高すぎることに気づくが、ハリカはあがっている。のぼせたと思い、亜乃音が手渡した水を一気に飲み干した。

 

部屋を間切りして、布団を敷いてもらい、ハリカの寝床ができた。「おやすみなさい」そう言って間切りを閉じられる。誰の目もなくなり、ハリカはうれしそうに布団に全身を預けて飛び込む。気持ちよさそうに温もりを感じる。

 

と、ハリカの部屋でタイマーが鳴り出した。亜乃音が入ってきて、テレビの電源を付ける。天気予報がやっている。「もう見なくていいんだった」と亜乃音は気まずくつぶやき、「ごめんごめん」とテレビを消して、部屋から出て行く。

 

作戦決行前夜

舵とるい子はマスク姿で、自分たちの車にガムテープをべりべりと貼り付けていた。

 

母と娘

亜乃音は、一人印刷の機械のある部屋にいて、パソコンでカメラのデータを見ていた。玲が息子と一緒に映っている卒園式の写真を。亜乃音はただ微笑ましそうにそれを見ていた。

 

ハリカがやってきて、亜乃音に毛布をかけてあげている。自分はいつも来ている青色のダウンジャケットを羽織って。「何してるの?」そう聞くハリカに、孫の写真を見た亜乃音は「私、おばあちゃんだった」とどことなくうれしそうに言う。

 

次に出てきたのは、孫の入学式の写真。「やっぱり似てるの、玲の小さいときの。顔とかじゃなくて、立ち姿っていうか…」思い出すように亜乃音は言う。「良かったなと思ってるの」

 

玲は19歳の時、突然いなくなってそれきりだった。「元気にね、玲が元気に生きてたってだけでね、もう十分」とは言いつつも、夫と映る写真を見ると「こっそり二人して会ってたとはね」とちょっぴり恨みがましく、それでも朗らかに文句を言う。

 

ハリカは「もう一回、行ってみよ?」と言う。どこに住んでいるかわかるかもしれないと。しかし、亜乃音は首を横に振る。「私はいらないだろうから」と。ハリカは「行こう」と少し強く言う。「亜乃音さんはお母さんなんだから」と。

 

「お母さんじゃないの」

 

亜乃音は鋭く言う。「玲はね、この人と別の女の人の間の子供」と。玲が生まれて実母はすぐにいなくなってしまったらしい。亜乃音と玲は血のつながってない母と娘だった。

 

「でもさぁ、誰から生まれたかなんて、そんなに大事なことかな?ただお腹の中に10ヶ月いただけのことでしょ。」

 

亜乃音は0歳から見てきた玲を思い出し、あんなこともあって、こんなこともあってと、アルバムをめくるように語る。顔だって似てくると。

 

「それをさ、一日だけふっと現れた人が壊しちゃうの」15歳のとき、「私があなたの本当のお母さんよ」と言う人が玲の前に現れて、メールアドレスを渡してきたらしい。「10年15年、ちょっとずつ積み上げて来たものを簡単にちょんって壊しちゃう」と。

 

「生まれたときからずっとつないでた手の感触が変わっちゃう。知らない人の手をつないだみたいになっちゃう」

「仕方ないのかな。愛されてたって、愛してくれなかった人のほうが心に残るもんね。人は手に入ったものじゃなくて、手に入らなかったものでできてるんだもんね」

「産んだ気になってたんだけどね」

 

そんな亜乃音の言葉に、「亜乃音さん」とハリカが話しかける。以前、仕事で親の承諾書をもらってきなさいと言われて、「いません」とハリカが答えたとき。その人が「冗談で、冗談でね」とハリカが何度も前置きしながら、

 

「へーかわいそうに。親から愛された記憶がない子って、人を愛することができないんだろうね」

 

と言ったらしい。「だからね、大丈夫だよ」とハリカは優しく言う。「見て、玲ちゃん、すごい優しそうな顔だし。子供もいて、お母さんになってるんじゃない?」と写真を見るように、見せるように言う。

 

「愛された記憶があるから愛せる。亜乃音さんの愛情、ちゃんと玲ちゃんに届いたから、自分の子供も愛せてるんだよ」

 

そんなハリカの話に、亜乃音はふふっと笑う。「あれ、私の話、おかしいかな?」とハリカもちょっと笑いながら言う。「ううん、ありがとう。いや、いいのいいの。落ち込んでるわけじゃないの。だって、生きてたんだから」そう亜乃音は言う。

 

決意させたもの

デジカメには紙幣のデータも一緒に入っていた。パソコンで見ながら、亜乃音は紙幣のコピーを印刷する気になっている。ハリカと一緒に古い機械の上にかぶせられた布をよけて、スイッチを押す。機械は動き、紙には偽札の紙幣が印刷されている。

 

亜乃音がパソコンで確認しようとしたとき、「動物画」というファイルを見つける。それを亜乃音がクリックすると、玲とその息子と京介が動物園を訪れている動画があった。亜乃音は笑顔で娘の動く姿を見ていた。その奥に、もう一人誰か見えるような。

 

紙がどんどん印刷されて、あふれ出す。「止まんないよー」というハリカに声に気づき、亜乃音はやっと機械を止める。トレーをセットし忘れていたので、床にバラバラと紙が落ちていたのだった。

 

1枚の紙に15個の紙幣が印刷されている。それがざっと100枚。1500万円分が、この一瞬で印刷されてしまった。ハリカはその紙を手で持ち上げて、「これじゃ使えませんよ」と笑う。透かしもなく、両面印刷でもなく、裏が真っ白だった。

 

これだけでも逮捕されると亜乃音は言う。「これが限界なの」と。ハリカはダウンジャケットのポケットに入れて、まだ持っていたあの2枚の偽札を亜乃音に返す。

 

二人は紙幣を印刷した紙をハサミで刻み、火で燃やし、トイレに流す。共同作業をどこか楽しむように。

 

「今度こそ寝ましょう。おやすみなさい」そういって二人とも寝床につく。その前に、亜乃音が言う。「変わってないと思いますよ」と。「愛された記憶なんかなくても、愛することはできると思いますよ」

 

「あのね」

ハリカは布団に寝転びながらスマホのチャット画面を開き、彦星に「今日私は布団で寝ています」と報告する。「布団と枕を発明した人にノーベル賞をあげたい」とも付け加えて。二人とも、ノーベル賞をあげたいことを言う。

 

「誕生日ケーキにろうそくを立てるって考えた人」「シャワーにシャワーって名前をつけた人」「ウサギの形に切ったリンゴ」「パレットの指を出す穴」「手品で出てくる鳩」「落とし物箱」

 

…そうしてハリカの夜は更けていった。

 

始まりの朝

夜が明けて、舵とるい子はガムテープで隠した車に乗り込む。

 

朝が来て、亜乃音はしぶとく起きないハリカを起こす。「あのね、私が布団から手を離さないんじゃなくて、布団が私を離さないの」なんて言い訳をする。

 

身支度を調えて、亜乃音は仕事へ、ハリカもジャケットと帽子をかぶり、帰る準備をする。「バイトさん探さなきゃ」亜乃音はつぶやく。「掃除してくれる人がいるといいな」なんて。ハリカは自分を指さす。「まあいいけど」と亜乃音はぶっきらぼうに優しく承諾した。

 

とりあえず床掃除からとバイトをハリカに言い、カギを手渡す。猫の餌と、「あなたのお昼ご飯も」と言われてお金をもらうハリカ。

 

亜乃音は家を出て行く。そんな亜乃音の様子を、るい子と舵が見ていた。

 

崩れていく空間

ハリカは亜乃音の家の中で白猫を見つけて、優しく話しかける。そんなハリカの存在に気づかず、舵とるい子が家に忍び込む。舵がぶつかってモップを倒してしまうが、ちょうど同じ頃に猫缶を落とした音で、ハリカは気づかない。

 

二人が隠れていることに気づかず、ハリカは外に出て、もらった鍵でドアを締めて買い物にでかける。るい子と舵は強盗のように家のなかを荒らしながら捜索している。

 

ハリカは買い物の帰り道、飛行船を見つけて思わずスマホで写真を撮る。

 

そんなハリカが亜乃音の家に帰宅すると、荒らされていることに気づく。るい子と舵とも鉢合わせ。しかし、るい子の堂々とした態度に何も言えず、舵と一緒に出て行ってしまう。ハリカは気づき、逃げようとする二人の車に乗り込み「泥棒ですよね?」と問い詰める。ハリカは取り押さえられてしまった。

 

母と子

亜乃音は道を歩きながら、まだ小さい子供とその母親の姿が目に入る。何も言うわけでもなく、ただ見るだけ。

 

その日の朝、まだ寝ぼけているハリカと一緒にトーストを食べたことも思い出しながら。

 

亜乃音は県道のガソリンスタンドに来ていた。そこで、玲が働いていて、亜乃音はこっそりと見ている。小学生の男の子が「ママ」と話しかけて、玲に向かって行く。息子を見ようとした玲は、ぱっと亜乃音の存在に気づき、二人は目が合う。

 

しかし、玲は何を言うでもなく、いつものようにという雰囲気で息子に話しかける。そして、何事もなかったかのように作業を続ける。

 

亜乃音は、差し出すためだったのか、手を振るためだったのか、出した手を引っ込めるしかなかった。そして、何も話しかけられず、そのまま帰る。

 

1万円

以前、ギャンブルで偽札を両替しようとしていた男(瑛太)が、お弁当屋で働いている。客から受け取った1万円をまじまじと見つめていた。

 

何もかももう

亜乃音は印刷所に戻る。入り口が開きっぱなしになっていて、なかが荒らされていることとハリカがいなくなっていることに気づく。ぺたんと座り込み、ハリカが脱いだ自分の寝間着に手を伸ばす。いつもの習慣のように、亜乃音はそれを畳む。

 

ハリカは舵のカレー屋に運ばれていた。身動きが取れないよう縛られて、口にはガムテープが貼られている。「話し合いましょう!何も取っていません。危害を加えるつもりもありません。忘れてくれたらそれでいい」と舵は早口で言う。

 

るい子は大きな態度で「そっちだって表沙汰にされたら困ることありますよね?私、知ってるんです」。

 

ドンドン

 

店のトイレの中からノックする音が聞こえる。水が流れる音がして、出てきたのは西海だった。身なりを整えていると、ごとっと西海から拳銃が落ちる。

 

「消せよ電気!」西海の指示に、従うしかない舵だった。

ーーーーーーーーーー

ええええーラストでいろいろ起こりすぎ!そして、るい子と舵がやったことを、ハリカのせいと思われてしまうのが切ないよう。というわけで詳しい感想は次の記事で書きます。

 

 

 aoikara

 

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