熟年探偵団に入りたい、aoikaraです。大人になっても少年の心を忘れない、いいですよね。とはいえ、「いや大人になってよ」という気持ちが湧いてくることもありそうですが。
というわけで今回のテーマは……
相棒21 第11話 元日SP「大金塊」感想
です。
※ネタバレを含みます。
▼前回の話はこちら
相棒21 第11話 ゲスト・スタッフ
- ゲスト:森崎ウィン、茅島みずき、佐藤B作、斉木しげる、井上肇、いしのようこ、片岡孝太郎
- 脚本:輿水泰弘
- 監督:権野元
相棒21 第11話 元日SP「大金塊」あらすじ
全国の美術館で窃盗が相次ぎ、広域重要指定になっていた事件が、窃盗団を一網打尽にしたことで解決された。しかし、解決に貢献したのが“捜査権のない民間の探偵社”ということで、警察上層部は怒り心頭。お灸を据える意味で、『熟年探偵団』を名乗る三人組を、建造物侵入の容疑で逮捕する。
執行猶予付判決を受けたのは、大門寺(斉木しげる)、串田(佐藤B作)、野崎(井上肇)の熟年トリオ。ただ、趣味で探偵をし、いくつかの事件を解決に導いてきたという彼らに悪びれる様子はなかった。
そんな中、元与党政調会長で、政界に多大な影響力を持つ大物衆議院議員・袴田茂昭(片岡孝太郎)の屋敷に、『邸内の金塊を盗む』という不穏な予告状が届く。袴田といえば一年前、杉下右京(水谷豊)に殺人教唆の罪を暴かれそうになるも、当時の秘書に罪をなすりつけることで逮捕起訴を免れた、曰く付きの人物。
警察に介入されたくない袴田は、後継者として修行をさせている息子・茂斗(森崎ウィン)を通じて、『熟年探偵団』に捜査を依頼する。袴田としては、家格を重んじ、茂斗の将来に並々ならぬ執着を見せる妻・虹子(いしのようこ)の手前、トラブルを大きくしたくないという裏事情があった。
いっぽう、『熟年探偵団』に興味を持った右京と亀山薫(寺脇康文)は、探偵事務所を訪問。するとそこには、茂斗の姿が。双方をマークすることにした右京と薫は、依頼を受けて袴田家を訪れていた探偵団に乗じて、邸内に入り込む。
右京と因縁のある袴田は、姿を見るなり追い払おうとするが、探偵団と同行していた寧々(茅島みずき)という若い女性の機転で同席を許される。実は彼女こそが、探偵団のブレーンで、鋭い推理力と観察眼を持つ才媛だった。行き掛かり上、特命係と寧々率いる探偵団は、金塊盗難予告の捜査で競うことになる。
予告状を送りつけてきた犯人の狙いは?
右京と美少女探偵が火花を散らす中、
事件は過去の因果と権力者の思惑をはらみ
思ってもみない方向に転がっていく!
参考元:第11話<元日スペシャル>|ストーリー|相棒 season21|テレビ朝日
感想
キャラクターはみんないい
今回の話はキャラクターがみんなよかったです!スピンオフを作ってほしいくらい!
斉木しげるさん、佐藤B作さん、井上肇さんというお三方の熟年探偵団は渋みから何から最高でした。
3人を引き連れる“先生”こと寧々さんは、若いからこその純粋さと、怖い物知らずでどんどん進んで行くし、知的でもあって、魅力的でした。
こういう話で若い女性が出てくると、やらんでいい無茶をして危ない目に遭うという展開も多く、物語の展開上で必要なパーツとしての働きを求められる感があったりするのですが、そういう描き方をしていなかったのもよかったです。
袴田家もなかなか楽しいですよね。警察を頼れないからって素人の探偵団は受け入れるんかいと突っ込みたくなる議員も。そつのない息子も。いっつも犬を抱っこしてあげている、浮世離れした雰囲気が漂う奥さんも。ピリピリとした家政婦さん、ひょっこり庭師さん、みんな個性豊かでしたね。
あ、忘れてた、地獄の軽業師も好きです(笑)
熟年探偵団や、家政婦さんや庭師さんは転職をしてとかで、再登場してほしいなぁ。
過去作を引き継いで
袴田議員は、2022年の元日SPで登場して、その話を引き継いだストーリーでもありました。Season20 第11話「二人」という話で、脚本は太田愛さん。
また、右京さんの中学時代のミステリー小説については、Season4 第8話「監禁」に登場した話ですね。(サトエリがぶっ飛んでて最高です!)古参は大喜びよ。脚本家は古沢良太さん。
今回の脚本は輿水さんが担当していますが、それぞれの脚本家さんたちが描いてきて、作り上げてきた相棒が今に引き継がれているのかなと感じました。
今までもありましたしね。赤いカナリアの本多篤人は輿水さんが作り上げて、最期を描いたのは真野さん。ついてない女の月本幸子を作ったのは古沢さんで、美しい去り際を描いてくれたのは太田愛さん。陣川君とかもいろんな方が描いているし、引き継がれていくのでしょう。
右京さんと亀山君の再会に改めて感謝
亀山君は正式な職員として警視庁に復帰!「特命係の~嘱託職員の~亀山~」と伊丹から呼ばれることもなくなるわけですね。
右京さんも言ってましたが、2022年は亀山君が特命係に帰ってきてくれたことが、本当に一番といっていいほどうれしかったことですよ。右京さんは言っておいて、「言い過ぎました」なんて、素直じゃないんだから。こういう素直じゃないところも、亀山君だからこそ出る素顔でしょう。
ラストの2ショットが本当によかった。ずっと見ていたくなります。
あ、あと青木君!いつか出て、亀山君と仲良く(?)してほしい!
ただの父と子とするけど、周りを巻き込むのは当たり前なのが政治家か
大金塊の窃盗に見せかけて、実は父と子、そして袴田家の因縁の話だったわけですが。袴田議員は「理念があったけど出世できなかった父の姿を見て、自分は出世の道を選んだ元善人の悪人」だったということなのでしょうか。悪い仮面を被った善い人だけど、仮面が顔に染みついてしまった人なのかなと。
以前はすごくあくどく描かれていて、善い人の欠片が見えたような記憶がないもので、悪人というイメージが抜けきらないのが個人的な感想。
政治家だから警察も乗り出していますが、はっきりと言えば家族の諍いというか、トラブルというか、もはや事件でもない。
息子の茂斗さんは、いろんな人の力を借りながら、「周りに迷惑をかけて申し訳ない」という言葉は出ず、「ごめんなさい。お父さん、僕を許して」なんだものな。いや、あなたの思いひとつでどれだけの人が大変な思いをしたんだと思う?すごく政治家らしいなと、少し皮肉めいたことを思ってしまいました。
亀山君は「お父さんの夢を君が引き継ぐんだ」と伝えていましたが、いや、政治家を選ぶのは我々なんですよ。お父さんがやめたら次の人は息子になる、というのは変な話で。
私がひねくれているのは大いにあるし、人物の描き方としてすごく面白みもあったけど、「実は善い人でした!」に私はしっくりと来なかったなぁ、という話です。
去年の相棒元日SPについて
先述したように、2022年の元日に放送された、Season20 第11話「二人」を引き継ぐ話だったので、そのことについても言及したいと思います。一年前、思うところはあったものの、Twitterの感想で軽く触れるのみで、ブログで言及することはありませんでした。
#相棒20
— aoikara@フリーライター (@aoikara_writer) 2022年1月5日
第11話 二人
スマホを持っていかれた少年に、記憶をなくした男性の物語。
イッセー尾形さんの演技がとにかく素晴らしかった!好きだなぁ。
今日や明日も暮らしていくことが大変な人たちにも、強く優しく心にしみるメッセージがありました。
それだけに脚本にはなかった演出は残念です。
このことについて書きたいと思っていましたが、ブログに精力的ではなかったので書かなかったです。個人的な気持ちが大きいです。本来は一年前に書くべきでした。でもかいておらず、そしてそのときの思いを伝えきれないとも思いますが、今書かせてください。
この話は、太田愛さんが脚本を務められました。太田愛さんは、とても愛情深い右京さん、そして根源には愛がある作品を描いてくれる方だと私は思っています。罪を犯す人も、どうして罪を犯してしまったのかを丁寧に描いてくれる。伝えたいことを丁寧に伝えてくれる。だから、私たち一人一人が自分事として考えたくなる、そんな話です。
太田愛さんが書いてくださる右京さんの言葉は、いつも愛があり、私は本当に好きです。
2022年の元日SPでは、太田愛さんが書いた脚本にはなかったシーンが追加されました。物語は素晴らしかったものの、そのシーンについて、私はよくない意味で気になったのをとてもよく覚えています。話の上で肯定的に描かれているだろう人たちを、すごくヒステリックで圧の強い人たちに描いていたから。
もしかするとそのシーンは脚本にあったけど演出が違ったのか、でも物語で伝えたいことがわかっているならそんな否定的なシーンにはならなかっただろうと思っていたら、そもそもシーン自体がなかったというから驚きました。どういう意図だったのか、制作側からは表立って何も語られていません。
そして今の今まで公式での説明がないのは、正直あまり誠実ではないなと思います。内々では話し合われたのかもしれませんが。
そのことについて、太田愛さんご本人がブログで言及しているのみです。
物語は素晴らしく、そしてゲストの役者さんの演技もとても素晴らしかった。日々を精一杯生きている人の声が届くようにとのメッセージも、観ている側に届きました。
ただ2023年の元日SPで、2022年の元日SPでは「悪しき」とされた人物が、「善し」として描かれているのは、少し違和感がありました。それでは、一年前に伝えたかったメッセージがぼやけてしまうのではないかと。
悪人だとされる人も多面的で、善人でも悪人に染まってしまうことはあるというのはリアルだと思います。さらに、前回のことを「絶対に許されることではない」という右京さんの姿勢は崩れなかったし、悪しきことはきちんと裁かれたわけで、遂げられなかった思いを遂げたという意図もあるかもしれない。
ある意味でside Aとside Bとして、両面から描いたともいえるかもしれません。ただ、それでもやはり、人の命を軽んじていた人が「実は善い人だった」と描かれているように見えてしまったのが気がかりです。
金塊を溶かして胸像にしてメッセージを伝える余裕がある人の話なのですよ。それで他人を巻き込む人なんですよ。今日を生きることも大変な人たちのメッセージは踏み台ではないと思います。
いろんな脚本家さんが書いてくれるからこその面白さ。その一人一人の思いを受け取って、形にしていくのがドラマの素晴らしさ。その思いとは全く違うものになっているのであれば、思いを確認していく作業や時間が必要なのではないかと思います。
いろいろと思うことがありながら、それでも見続けている私にも責任があるわけです。ときどき、見続けていいのかと疑問に思う出来事がいくつかありながら、それでも見続けるという選択をしている私もいます。
それは何も語らない制作側を支持しているとも受け取れます。葛藤があるとか言いながら、楽しんで観ているわけです。
作品を作る人の思いが踏みにじられることがあれば、観ている者として声を上げたいです。それだけしかできないで、結局観てしまうのですが、やっぱり観たいと思ってしまうのですが、そういう思いはあります。
作品全てを否定したいわけではありません。相棒は面白い。相棒は好き。だけど、人の思いが踏みにじられていいとはやはり思いません。
次回予告がなかった(見そびれた?)ような気がしますが、次回も観ます。待っています。
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