最近世間を賑わしていることと言えば…
日大アメフト部 悪質タックル問題
私がこの問題を初めて知ったのは、関学側が日大から回答をもらって5月17日に開かれた記者会見でのことでした。
加害者側の謝罪会見ではなく、被害者側が記者会見をしているということがまず驚きで。さらに、加害者側である日大が悪質タックルを受けた本人へ直接の謝罪をしていないというのにも驚きました。
関学アメフト部の鳥内監督が日大側に対して一番気持ちを抑えた表現として「憤り」としていることに、強い怒りを感じらっしゃるのだなという印象を受けました。
それから1週間以上経っても問題が収束していないどころかどんどん大きくなるとは予測できませんでした。そして、私自身はものすごく部外者ですが、憤りを感じています。
「こんなことが許されていいの?」「こんなことがあるの?」という呆れというか怒りというか…。日中とか寝る前にも考えてしまって、すごくもやもやしています。これはひどいぞと、忘れちゃダメだなと思ったので、超個人的な思いですが、ブログに書いて記録と記憶として残そうと思います。
- 当該選手の会見を見て、「すごいな」
- 日大内田監督・井上コーチの会見を見て、呆れた
- 一概に一方が正しくて、一方が悪いとは言えないが
- どんどん被害者が増えていく
- 今の世の中は情報を“大量消費”しているような
- 消費されていく世の中で問題も消えてしまうのではないか
- 被害者のための解決がされますように
当該選手の会見を見て、「すごいな」
この騒動があってから初めて内田前監督が公の場に出て、囲みの会見を行い、謝罪と監督辞任を表明しました。それは被害者とそのご家族に謝罪をするために外に出て、空港での記者会見でした。
が、結局誠意も伝わらず(それまでとそれからの対応を見たら納得の誠意のなさなんだけど)、真実もわからなかったということで、被害者側が大阪府警に被害届を提出。そして被害者の親御さんである奥野康俊さんが会見を開き、非常につらい尋常を吐露していました。それが5月21日の夜。
その直後に、5月22日に悪質タックルをした日大の選手本人が記者会見をするという報道があり、非常に驚きました。24日に日大から関学への文書の回答があるとのことで、そこを待つか日大側の会見があるのかなと思いきや、まさか本人が出てくるとはという気持ちでした。
5月22日午後2時から加害者側である日大の当該選手が弁護士同伴のもと記者会見を行いました。私もリアルタイムで見ていました。なお、もうご本人の顔や名前は報道されていますが、このブログでは「日大の当該選手」と記したいと思います。
会見の目的は謝罪
会見の流れは、まず同伴している弁護士の方から会見の趣旨の説明があり、日大の当該選手の謝罪、そして悪質タックルが起きた前後の時系列を説明した陳述書が読み上げられて、記者たちからの質疑応答、時間が来て最後に弁護士からまた会見の趣旨と謝罪の意が述べられて終わりました。とても構成がわかりやすい会見でした。
最初から弁護士の方が説明していたのが、被害者に対する謝罪の会見だと。顔を出さないで何が謝罪かということで、20歳の学生という立場でありながら、一人で顔を出して会見に臨むことになったと。
本人も謝罪の気持ちを述べていて、「指示があった」ということ、そしてそれに至るまでの経緯を事細かく伝え、真実を述べることが謝罪と償いの第一歩だと弁護士の方が最後にまとめていました。
実際に述べていたように、謝罪の気持ちが伝わる会見だったなと思いました。
一貫して「責任は自分」
悪質タックルに関しては、内田前監督と井上コーチからの指示があったとしながらも、実際に行動してしまった自分に責任があると日大の当該選手は述べていました。
記者から内田前監督に対して思うことだったり、指導の在り方についてだったりと問われても「それは自分が答えることではない」として、恨み言一つ言っていませんでした。一貫して真実を述べて、謝罪の気持ちがあって、責任は自分にあると言っていたのも潔いなと感じました。
時系列を追って事細かくわかりやすい
陳述書に関しては記者たちに配られたものを、アメリカンフットボール・マガジン編集部が掲載してくださっているので、そちらの記事をリンクとして記載させていただきます。
この陳述書が時系列に沿って非常に事細かく述べられていて、とても理解しやすかったです。なぜ悪質タックルに至ったのかという、試合当日より以前のことから。気持ちの焦りと、内田前監督・井上コーチからの精神的なプレッシャーのかけ方。
実際に悪質タックルをしてしまってから、当該選手はことの重大さをきちんと認識して、謝罪したいと思っていたのに止められていたこと。日大の対応があまりにも遅すぎること。さまざまなことがわかりました。
本人へのすごいな、日大へのドン引き
まずこの会見を見て思ったのが、加害者の立場として会見を開くというのはものすごいことだなと。逃げることもできたわけじゃないですか。問題が収束するまで身を隠すという方法だって洗濯できました。日大は未だにそういう態度ですし。
加害者として顔と名前が出れば、今は全て残ります。この先に生きていけば「あの人って…」と言われる人生が待っているわけです。そのリスクを背負った上でも、謝罪して償いたいという気持ちが勝り真実を述べよう、というのはなかなかできることではありません。それは本当にすごい。
今までもさまざまな人の謝罪・釈明会見を見たことがありますが、かつてこれまで真摯に自分の罪を認めて一切の言い訳をしなかった人は見たことがないなあと思えるくらい、潔い態度だったと思います。
一方で、日大の当該選手が会見で語ったことが事実だとするならば、表現を選ばず言うなら日大アメフト部の指導者はクレイジーだなと思いました。今の時代にこんなことがあるのか、こんなことがあっていいのか、ってぐらい。言葉を失うほどに。
そして、時間が解決してくれるだろう精神でいるだけで対応も全然していない日大アメフト部並びに上層部。ほとぼりが冷めるのを待てと当該選手にも求めて、より苦しめているのに気づけないのは指導者・教育者という立場としてどうなんだと思ってしまいました。
加害者であることも、この覚悟や勇気も忘れちゃいけない
本人もおっしゃっていたことですが、日大の当該選手は加害者なんですよ。もちろん精神的に追い詰められていて、暗に指示された状況だったとしても、あまりにも悪質なタックルをしたことには間違いないんですよね。
実際に被害者はケガもしていますし、一歩間違えればアメフトができないだけではなくて、日常生活も送れないほど後遺症が出る可能性もあった。もっと言えば命に関わる重大な被害を受けたかもしれなかった。
そして、日大の当該選手は悪質タックルの後にも、2回ラフプレーを繰り返しているんです。退場になった3回目のラフプレーに関しては、相手と小競り合いして挑発するような態度にも見えました。アメフトを知らない私としてはあれがどうなのかはわかりませんが、ど素人から見ると「あまりにも態度が悪すぎない?」という印象も受けました。
なので、あまりにも悪質なタックルをした人間であることは忘れてはいけないことだと思います。
ただ、人間は間違いを犯しますし、その後どうするかが重要で。間違いを犯した後の彼の行動というのはものすごく立派でした。謝罪や贖罪の気持ちも感じましたし、何より20歳という若さで一人で会見をして、きちんと真実を述べるというのは本当に勇気のあることだなと思います。
被害者の親御さんである奥野さんも当該選手に対しては真実を述べてくれたことに感謝していましたし、刑事告訴をするとしても当該選手には減刑を望みたいという意思も明らかにしていました。
悪質タックルに対して刑事責任を負うのはもちろんですが、被害者側の感情や十分な社会制裁を受けたことを考えれば、部外者がもうどうのこうの言うことではないのかなと思います。
日大内田監督・井上コーチの会見を見て、呆れた
日大の当該選手の会見を見た翌日5月23日の午後7時頃に、午後8時から内田前監督と井上コーチの記者会見が行われるという報道がありました。「急すぎるな」ということにも驚いたんですが(当初は会見場所も指定されていなかったらしい)、実際に見たら…もうね。
こちらもリアルタイムで会見を見ていましたが、正直呆れてしまって「あ、これはもう平行線をたどるんだ」「これ以上は新事実は出てこないぞ」と感じて、途中で見るのをやめました。一応、後で全部見直したんですが…うーん、ひどいですね。
全て後手後手、会見でも後手後手
まず何のための会見なのかがわからない。最初に内田前監督と井上コーチが被害者側と関学に謝罪を述べて、すぐに質疑応答で「えっ?」となってしまって。なんで受け身なんだろうという疑問がまずあって。
日大の当該選手の会見は、時系列を追ってとても詳しかったんです。なので、彼が語ってくれた時系列に沿って、内田前監督と井上コーチとしてはその当時についてどのように把握していたのか、そして悪質タックル後についての対応についてもなぜ遅くなってしまったのか、その説明をしないのかなと。
記者側から一つ一つ聞かなきゃいけないし、その質問をばらけさせなきゃいけないとなると、そりゃあ当然時間がかかるわけで。そして、全ての整合性を確認できるかもわからなくて。
今までも関学が会見を開き、選手が会見を開き、ようやく監督とコーチが会見を開くという後手後手の態度で受け身体制でしたが、この会見自体も受け身なのかーという印象を抱いてしまいました。それが会見の自然な流れだとしたら揚げ足取りなのかもしれませんが。
内田前監督
内田前監督は、QBにケガをさせる指示をしたことに関しては真っ向から否定する形でした。日大の当該選手の言い分とあまりにも食い違いがあるので、どう解釈したら良いのか難しいです。世間は完全に日大の当該選手の言い分を信じているように思えますが。
ただ、もし内田前監督の主張が事実だったとしても、問題点がものすごくありますよね。試合直後の記者とのやりとりや部員への通達として「内田がやらせたでいいんじゃないですか」「俺がやらせたんだ」としながらも、タックルの悪質さを確認してから(問題が大きくなったから?)発言を撤回するというのはなぁ…。
本当の意味で選手を守ろうとするならば、ちゃんと悪役に徹して「指示した」で通さないといけないのではないかなぁと。今のままだとただの悪ですもの。発言を翻した理由は事実を述べるためなのか自分を守るためなのか。
試合前に当該選手が「QBをつぶしにいきます」と言いに行って「やらなきゃいけないよ」と内田前監督が言った、と当該選手が主張した件についても、「試合前に来たが何を言ってたかはわからない」としました。だとするなら試合直前に選手が何か言ってることを適当に受け止めているってことがひどいですしね。
しかも、問題の悪質タックルを初めて確認したのが3日後。試合後に選手が泣いていて、記者からも「あれはひどかった」と該当するラフプレーのことを言われていたのに確認もしていない。アメフトの監督としてのやる気も感じられない。
選手が追い詰められていたということ、アメフトをやめるということもなんとなく他人事というか…。今までこのやり方でやってきて日本一にもなってるし、全てが間違っていたんだなんて認めるのが難しいのはわかりますが…。一部分の非は認めても、選手の不安定さが原因って口ぶりでしたし。
関学や被害者であるQBの選手とご家族への謝罪に対しても、「向こうから連絡が来るのを待ってた」だもんなぁ。
とまあ、一つ一つ挙げていたらキリがないですが、嘘を吐いているなら論外ですし、本当のことを言っていたとしても指導者としてアウトと思いました。
とはいえ、ご心労で食事も喉を通らないほどで、ご自身も社会的制裁を十分に受けていらっしゃる。これから刑事責任を問われる可能性もある。ネットで叩かれていることに非常に参っているそうですし、追い詰めすぎることもしたくはないです。
井上コーチ
井上コーチは「QBをつぶしてこい」と指示したのは自分で間違いないとしながらも、ケガをさせるという主旨ではなく、「おもっきりやってほしかった」という意味での発言だったと主張しています。相手にケガをさせることは目的ではなく、あくまで当該選手のプレーを成長させるためだったと。アメフトでは「つぶせ」という表現はよくあることだそうなので、本当にそうだったのかもしれません。
私が気になったのは、井上コーチが「おもっきり」「おもっきり」と繰り返していること。井上コーチの発言全般に言えることなのですが、表現の仕方がすごく狭くて、何を言いたいのかよくわからなかったんですよね。これで指導するとしたら、指導される側としては意図を汲み取るのに苦労しそうだなぁと。まあ、記者会見という場で緊張していた面もあって、ご自身でも何を言ってるのかわからないということは多分にあると思われるのですが。
日大の当該選手はとても力があるのですが、ただ気持ちの優しい部分があって全力でぶつかりきれないところがある。それをどうしたら良いか考えて、メンタルとして闘争心を出してほしいと、「つぶしてこい」という表現になったということなのですが…。合わせて重圧をかけるような部分もあったようなことも言ってましたし。
指導したい方向性はまあわかります。でも、坊主にさせたり、グランドを走らせることで、闘争心が出るのかなぁと。思いっきりやってほしい選手に「つぶせよ!」でその意図が伝わって闘争心が出てきたらそんなラクなことはないよと。
指導方法の幅が狭すぎないかなぁと思ってしまいます。このやり方で理解できる選手もいるのかもしれないですが、私が部外者の立場から見ると「根性論やんけ…」と思ってしまいます。もっと論理的なメンタルトレーニングをすれば良いのではないかなと。
また、井上コーチは「ケガをさせてこい」「相手が定期戦に出られなかったらこっちの得だろう」などケガをさせるプレーを助長させる表現をしていないとしながらも、闘志を出させるために「いろいろ言った」とはしています。過激な表現もしていたのかもしれません。
井上コーチの発言を日大の当該選手の発言と照らし合わせるならば、まず井上コーチには「良いプレーをしてほしい」という目的があった。もし当該選手が「ケガをさせるかも…」と不安に思うならそんな不安はいらない。もし、「相手がケガをして定期戦に出られなくてもこっちの得になる」くらいポジティブに考えれば良い。というニュアンスでガーッ「いろいろ」と言ってしまって、でも精神的に追い詰められていた当該選手は「つぶさなきゃ、ケガをさせなきゃ」と思ってしまった、のかもしれません。
これを日大側が主張してきた“乖離”だとしても、指導力不足であることは変わりないです。もし全部嘘だとしたら、ケガをさせろくらいの意味を込めていたのかもしれないけれど。これまたわからない。
司会者にわかる日大の危機管理能力の欠如
この会見では司会者の横暴ぶりも話題になりました。午後8時から始めて午後9時半には終わる予定だったらしい記者会見ですが、記者から質問が途切れずまだ続きそうで、司会者の方がいらだっていたんですよね。それでご乱心になられた。
日大広報部の方とのことで、連日この問題の対応に追われていて、心労があったのでしょう。だから感情が高ぶってしまったのかなぁと。実際、この会見の後にこの方も入院されたという話もありますし。
でも、それは日大のアメフト部が加害者側の問題なのであって、仕方のないことでもあります。あまりにも立場と事の大きさをわかっていない。日大はもうダメなんじゃないか、と思わせてしまう一幕でもありました。
守る人、切り捨てる人、はっきりわかる
この会見の最後で内田前監督と井上コーチの処分もあきらかになりました。内田前監督はこれ以前のご自身の囲み会見で監督を辞任されるとしながらも常任理事は「関係ないこと」としていましたが、今回で常任理事を一時停止・謹慎することを発表。井上氏はコーチを辞任するとのことでした。
その後、会見が終わって、内田前監督だけが職員に手を引かれてすぐに会場を後にしました。井上コーチだけがぽつんと一人残されて、たくさんのカメラのフラッシュに焚かれて、それから会場を出ました。
この処分の違いと会見の終わり方で、日大が守る人と切り捨てる人を明確にしたんだなと個人的には感じてしまいました。内田前監督は守り、井上コーチは切り捨てることにしたんだなと。
これは日大アメフト部の問題なのだから監督を辞任するのは当たり前。でも、その後の対応の遅さが事態をどんどん大きくしていて、日大としての意識の低さも問題になっている。しかも、大学教育のもとで行われている部活動なのですから、当然大学の責任もある。
それなのに常任理事は「関係ない」なんて態度ならそりゃあ反省しているとは思われない。今回だって常任理事は一時停止の謹慎って、こんなのほとぼり冷めたら復帰させる気満々じゃないのよって印象を受けてしまうんですよね。
一方で、井上コーチは「つぶせ」と指示を出した人物とされて、コーチも辞任して。心労だってあるでしょうが、入院したのも内田前監督だけ。
なんでしょうね、悲しいです。こういう汚い部分をまざまざと見せつけられてしまうと。
一概に一方が正しくて、一方が悪いとは言えないが
私は基本的に人が言っていることを信じてしまうところがあって、日大の当該選手の会見を見たときにも、完全に信じ込まず客観的な目線も持たないという懸念がありつつも、おそらく事実を述べているのではないかと感じました。
一方で、日大の内田前監督と井上コーチの会見を見たときにも、ここまで来て人間が嘘を吐くとは信じたくない、性善説を信じたいという気持ちがどこかあって。それこそお互いの気持ちに乖離があったとするならば、言い分の違いにも整合性がとれるのかもと思ったのも事実です。
一方が本当のことを言っていて、もう一方が嘘を言っていたら、事態としてはとてもわかりやすいです。ただ、実際にはお互いが本当だと思っていることを言っているけれどすれ違っている、という場合もなくはないとは思うんです。100%信じるとか、100%疑うとかできたら良いけれど、それは難しい。事実は当人しかわからないから。
仮に両方とも事実だと思っていること、事実だと思い込んでいることをきちんと述べてくれたのだとしても、やはり内田前監督や井上コーチに責任があると思います。追い詰めることでしか成長を促せない指導者としての幅の狭さ、選手を追い込んでいるという自覚がないこと、今でさえ全責任が自分だとは思っていないこと、その未熟さを口では認めながらも変えようとしていないこと、それが監督とコーチの会見から透けて見えて問題点だと感じました。
でもね、内田前監督と井上コーチは事実を言ってるのかな?という気持ちも出てきてしまうんです。部内で暴力が状態化しているという報道もありました。事実かどうかはわかりませんよ。でも、一度聞いてしまうとそうなのかもと疑ってしまうようになる。
だって大学としては内田前監督を守って、井上コーチを切り捨てるという方向に進んでしまっているじゃないですか。だとするならば、あの会見は内田前監督の責任を少なくするのには有効だった、そこに嘘が隠されているんじゃないかと疑いたくもなってしまうのです。
何にせよ、アメフトが大好きだったという一人の青年が、アメフトはもうやらないと言うほどの卑劣なことをさせた、またそういう状況に追い込んだということは紛れもない事実です。
一方で、社会的には内田前監督と井上コーチが指示したに決まっていると、有罪判決が下されているような勢いも怖いです。何が事実かはわからないし、人は信じたい方が信じるし、でも私は何を信じたら良いのかわからない。日大の当該選手を信じたいけれど、それが全てだと決めつけてしまうのは危険ではないかと問う自分もいて。
結局事実が明らかになることはないのではないか、そんな風に思ってしまいます。
どんどん被害者が増えていく
絶対に忘れてはいけない悪質タックルを受けた当人
当たり前だし大前提なんですが、絶対的な被害者は悪質タックルを受けた関学のQBの選手。そのご家族。物理的なケガという部分でも被害を受けましたし、意思を持ってケガをさせられたという恐怖感も今後あるでしょうし、アメフトをやってたからという悲しい後悔もあるでしょうし、計り知れない被害に遭われたと思うんです。
ならば加害者側としては、この被害者の方を思って何ができるかだと思うんですよね。本当に謝罪して罪を償いたいと思うならば、大学を守るとか、部活を守るとか、自分を守るとか、そんなことを抜きにして行動しなければならないと思うんです。立場を超えた人間としての態度として。
なかなかそんなことができるほど人間は立派ではありません。偉そうに言えるほど私だって立派な人間じゃない。でも、日大の当該選手はそうした。本当にすごいことだと思います。だから、ご家族も当該選手へ理解を示してくれているのだと思います。
日大関係者・学生達
また日大の対応の遅さ・甘さ・悪さがどんどん露呈し広がっていることから、日大関係者も風評被害を受けていると思います。日大関係者の99.9%が真面目に学んでいる人たちだと思います。教職員や学生の方々も。
学生からは「恥ずかしい」と言われ、教職員組合も声明文を出し、アメフト部の父母会も会見をし、アメフト部の部員たちにも当該選手を守ろうという動きが出ている。日大の中にも社会的な目線もきちんと持っていて、大学が何もしてくれないから自分たちが動かなければという動きがあるんです。本来はそれができる素晴らしい学校なんですよ。
だからこそ、アメフト部の問題を「俺ルール知らないもん」で片付ける理事長だとか、問題を把握できていない日大上層部の方々を何とかしないと。でもそこは変わらないんだろうな。変わらないと思いますよ。ほとぼり冷めるでしょ、でいいのか?
今の世の中は情報を“大量消費”しているような
ちょっと話がそれますが、この問題について思うこととして。
日本には大量生産、大量消費の時代がありました。今でもその側面はあると思うんですけれど、皆が豊かなわけではないので物を大量消費するのにも限界がある。そんな状況で、誰もが目にすることのできる“情報”が大量消費されている時代だなと個人的に感じます。
どういうことか自分なりの言葉で説明してみます。
何か話題になることがあれば大きく取り上げられて、みんなで一斉に食いついて、感情をぶつけてすごく膨大なものになって。でも、新しい話題が出てきたら、古いものは流されてまた新しいものに食いついて…と繰り返しているように感じます。一つ一つのことに真摯に向き合っているようには見えなくて。
悪いことをした人がいれば正当な理由で怒りをぶつけることができて罪悪感を抱かなくて済むし。正論をふりかざすのは気持ちが良いし。
その問題と向き合って考えようというよりは、感情やストレスの捌け口になっていたり、意見を述べることで自己表現したがっている人があまりにも多いというか。
すごく取り上げられていいようにされているのに、感心がなくなったらどうでもいいというような状況に対して、まるで消費されているだけのような感覚があるんですよね。それが私の言う「情報の大量消費」です。
でも、もしかするとそれが人間の自然な感情かもしれないんですよね。私もそういう部分はあると思います。SNSやブログなんて自己表現の最たるものだし。この記事だって、関係者からすれば神経を逆なでするようなことばかり書かれているかもしれない。
私は一つ一つのことを考えてしまうと、すごく深入りしてしんどくなってしまうんですよね。だから次々に問題が起きてしまうと、どんどんしんどくなってきて。この時代の流れに全然ついていけてないなと感じてしまいます。
消費されていく世の中で問題も消えてしまうのではないか
連日この問題が報道されていますし、まだ問題が収束していないのでしばらくは続くと思います。でも、また新しい話題が出れば、そっちが取り上げられてこの問題が記憶の片隅に追いやられてしまうと思うんですよね。
私もそうやって忘れてしまうと思うんです。でも、忘れてはいけない問題なんじゃないかと思って。そのときの気持ちをきちんと覚えておいて、忘れないようにこの記事を書こうと思いました。
被害者のための解決がされますように
今回の悪質タックルは刑事事件になるほど悪質な問題です。被害者が明確にいるので、その被害者が望む解決、被害者が救われる解決がされますようにと願っています。
今日5月26日の午後3時から関学と被害者のお父様の会見が開かれます。また、日大アメフト部では当該選手を応援する声明文を作成しているとのことです。関東学生連盟の規律委員会では、悪質タックルは監督とコーチの指示であったと認定する方針を固めたという報道も出ています。
少しずつではありますが、被害者のための解決に前進しているのではないかなと思います。被害に遭われた方と、追い詰められた当該選手と、両方のアメフト部員たちと、真面目に頑張っている日大関係者・学生たちが穏やかな生活が送れるように心から願っています。
aoikara