中卒フリーライターほぼ無職。

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かこさとしさんに見る「絵本作家」の生き様

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絵本はしばらく読んでいなかったaoikaraです。読んでいなかった、つまり最近は読みました。その理由は…

 

かこさとしさん

 

の生き様を見たからです。

 

プロフェッショナルを見て

『からすのぱんやさん』や『だるまちゃんシリーズ』などで有名な絵本作家・かこさとしさん。今年5月2日に亡くなられました。その約1ヶ月後の6月4日にプロフェッショナルという番組で密着されていた様子が放送され、私も拝見しました。

 

かこさとしさんの名前は存じ上げていました。仕事で絵本についての記事を書いたことがあるので、そのときに。

 

おそらく小さい頃に読んだことがある作品はいくつかあるのですが、作者の名前までは覚えていなかったので、「この絵柄、見たことがあるな」と幼い記憶をふわっと蘇らせてくれる感覚はありました。

  

命のタイムリミットが迫ってくるような

番組はかこさんが亡くなる前の3~4月の1ヶ月に密着していました。誰かの介添えがないと動けず、常に娘さんが介護。言葉もゆっくりゆっくりと話し、考えて考えてやっと言葉が出てくるような様子でした。

 

筆を持つ力も入らず、かつてのような絵は描けなくなったそうです。体の痛みにうめく姿もありました。病院に行き、3月31日の自身の誕生日を迎えられるだろうかと不安がる様子もありました。誕生日は迎えられて、家族の方たちに祝福されていました。あれは素敵なシーンでした。

 

人の命がふつふつとついえようとしているのを見ているようで、胸が痛みました。命のタイムリミットが迫っていることは、誰よりもご本人が感じていたように思えます。

 

絵本作りへの情熱

それでも、まだまだ「絵本を作りたい」と思っているかこさん。ずっと以前から寝かせていた『みず』という作品があり、それを完成させたいという思いがずっとあるようで、作品作りへの情熱が消えていないことが本当に伝わってきました。

 

絵本の作り方にも驚きました。絵本は絵があって、楽しくて、面白いような気持ちになれるものだと私は思っていて。でも、それだけではありませんでした。言葉は悪いけれど、私は絵本を作るということに関して“舐めていました”。

 

「子どもさんを侮らない」

 

それがかこさんが常に抱いている思いだそうです。ちゃんと物語には意味があり、それを理解してもらうためにどんな言葉を使うのか、どんな絵を添えるのか、真剣に向き合っていました。

 

絵本を読んでもらう年齢によって、どれだけかみ砕くかも変わってくるので、年齢という点も真剣に考えるそうです。新しく作ろうと思っている『みず』という作品でも、かこさんはどの年齢に向けて作るのかをしきりに気にしていました。

 

水は顔を洗ったりうがいをしたり身近にありますが、果たしてどこからやってくるのか。自然にもたくさんある水。液体・気体・固体の三態に変わります。そういう水の仕組みについて読み解いていく科学の絵本のような感じでした。

 

大人になれば何となく自然に理解していたり、学校に行けば理科として習うこと。それをもっと小さな子どもに理解させるには、「うんとやさしく」しなければとかこさんはおっしゃっていました。その言い方も優しいなぁと思ったり。

 

文章はすでにかこさんが書き上げていましたが、体調のこともあって絵を描くのは難しそうだということで、別の絵本作家さんに絵を依頼することになりました。その後、鈴木まもるさんという絵本作家さんが、かこさんの文章をもとにラフ画で絵本の形を成した仮の原稿を持って、編集の方と一緒にやってきました。

 

かこさんは一度全部に目を通します。そして、「十分」と満足であることを伝えるのです。が、何となく言いたいことがありそうな雰囲気。ところが、体の具合が悪く苦しみ始めてしまいました。苦しみながらも、何か伝えたいことがあるようで口を動かしている様子もありました。一度休憩を挟み、落ち着いてから、かこさんは口を開きます。

 

鈴木まもるさんは『みず』の絵本で、解説して内容を導いてくれるキャラクターを用意していました。しずくの形をしたキャラクターだったのですが、かこさんはそこが気になっていたようです。空から振ってくる雨というのは、しずく形ではなくまん丸の形をしているという説もあるらしく、その相違が気になるとのこと。

 

また、自分が書いた文も子どもにとってはわかりにくいと思ったようで、「全部やり直し」と自分に言い聞かせていました。ただ、そこに悲壮感は全くなく、むしろ前向きな言葉のように感じました。

 

何よりも自分の身体のことを優先させなければならない状況なのに、それでもまだまだと、妥協することなく「絵本」を追い求める姿はすごみがありました。これは最後の日々を追いかけたのではなく、間違いなく「絵本作家」のプロフェッショナルな姿を見ることができました。

 

優しく人の良さも魅力的

かこさんは1926年生まれで戦時中も生きた人です。戦争中はお国のためにと言っていた大人が、戦争が終わると「戦争なんて良くないと思っていた」と手の平を返して、そんな姿に戸惑ったとも語っています。また、考えることもなく戦争を受け入れていた自分も恥じたと。

 

これからは子どもたちのために何とかしたい。そんな思いから得意な絵を活かして絵本作家になったという経緯もあります。

 

戦時中から戦後へ、何もかもが変わってしまった時代を生き抜き、そこに意味を見出す人は強いですね。そして、力を得ることよりも、子どものために何ができるかという考えに至ると知り、ものすごい人格者だなぁと思いました。

 

かこさん、実は東京大学工学部を卒業されていて、そもそも民間の化学会社研究所にも勤務していたというのだから驚きます。おそらくものすごく頭も良く、それでいて絵だってものすごくうまくて、天は二物以上も与えてくれるものなのだなと思ってしまいます。

 

そして、何よりもすごく人格者なんです。番組を見ていても、かこさんの人柄がよく表れていました。密着にやってくるスタッフが来れば、必ず「ご苦労さん」と柔らかい口調で声をかけて、微笑んでいるような表情を見せて。長年の編集の方にも「ご苦労さん」と言って。そこにいる人に必ず心配りをする方なんです。

 

頭も良くて、芸術の才能もあって、さらに人格者。多くの子ども達が喜び、そして考えようとする絵本をかいてくれた人。なかなかできる生き方ではありませんし、そういう人だからこそ絵本作家のプロフェッショナルになれるのでしょうね。

 

本当にすごいなと思います。その生き様は本当に心から尊敬します。素晴らしい人でした。

 

大人として絵本を読んで

この番組を見て、久しぶりに絵本を読みました。もちろんかこさとしさんの作品を。私はもうすっかり大人ですが、面白かった。子どものようにわくわくとして、大人として客観的な視点も持ちながら、「なるほど」と学べることもあって。

 

子どもに教える「大切なこと」は、大人になっても「大切なこと」ばかり。だけど、いったいその「大切なこと」のどれだけを守れているのかな。ほんのわずかな気がしてきます。

 

絵本を読みながら、人にとって「大切なこと」を学んでいけるのは、大人になってからでも遅くないとも感じました。そんな大人でありたいと思います。

 

 

 

 

 

 

aoikara

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