※ネタバレを含みます。
「すべてがつながった」
最後の最後まで読み終えたたときにそう感じた。やっぱり、湊かなえだ。
こちらは単行本
こちらが文庫本です。
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く―死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。
出典元:内容(「BOOK」データベースより)
“少女”は良くも悪くもすべてがみずみずしい
17歳は大人ではない、少女だ。思っているよりもずっと打算的で、だけど自分一人ではどうしようもないほど子どもで。嫌悪感も愛情も自我も、全てが強すぎる。だからこそ、すべての感情がみずみずしい。
だからこそ「人を死ぬところを見よう」という思いは、とても不謹慎なように思えるのだが、17歳らしくもある考えなのだ。
そんな17歳の少女の友情はもろい。ときに残酷でもある。だけど、きっと強くもあるのだろう。それ以外の年のときより、何倍も何倍ももろくて壊れやすくて残酷で、それでも強いのだ。由紀と敦子の友情も、そんな風に思える。
みずみずしさに、読者もリンクする
「私は子供じゃないわよ」って思っているであろう少女が、もっと子供に騙されてしまう。私も同じように騙されてしまった。
だから、あのナイフが突き刺さって背中が真っ赤な血で染まっていくのは、本当にはっとなってしまった。何が起きたかわからない、由紀の気持ちをそのままに感じられた。
そのとき、敦子が剣道をやっていた頃の勘でナイフをはたき、軽やかに一緒に走りだそうとする姿は、由紀から見えている姿そのもの。だから、すごまじく敦子がカッコイイのだ。あのシーンは、とても好きだ。
悪人には制裁を
と展開のが、湊かなえさんらしい。
過去に担任をしていた小説家志望の小倉は、由紀の小説をパクって、その制裁に追い詰められて自殺した。少女を買っている三条は、その実態を告発されて逮捕された。その娘・紫織は親友の自殺を自分を語る術としてしか思っておらず、最後は遺書を書いた。
自業自得とも言える制裁なのだが、人を不幸にしたあげくに自滅してしまうので、誰も幸せにはならない。だからなのか。悪人が制裁されていること自体は喜ばしいが、それに手を叩いて喜びたいという気持ちにもなれないのだ。
最後に「すべてがつながる」
少女の気持ちと一緒に揺れ動いたり、悪人の制裁を傍観したりと、作者の手の平の上で転がされていて。感情だけでなくトリックでも手の平の上で転がされていた。
湊かなえさんなら、絶対に仕掛けてくる。そう思いながら読んだはずなのに、最後の最後の遺書まで気づかなかった。あの名前を見たときに「あれ?」と思ったはずなのに、それでも気のせいかと打ち消すような。やっと気づいたときに
「すべてがつながった」
と思える。とてもすっきり。読み返したい気持ちもあるが、自分の中で点がつながって線になって、ぴたっとはまって、そのみずみずしさを残したいから読み返さなかった。
私の17歳のときの記憶の近くに、そっと物語として残しておきたい。
以上です。
映画化もされているようですね。元剣道少女がやまとなでしこ的な山本美月さんで似合いそう。ただ、タカオタカオは吾郎ちゃんじゃない。全然おっさんじゃない。だって、普通にカッコイイおじさんじゃないですか。でも、見てみたいです。
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