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【読書感想文】奥田英朗「ナオミとカナコ」読者はもう一人の共犯者

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※ネタバレを含みます。

※記事内の引用は明記してあるもの以外、全て書籍からです。

 

物語が進むにつれて、目が離せなくなる。物語の疾走感と共に、ページをめくる速度も速くなる。読み終わった後には、ナオミとカナコのように「ほうっ」と息を吐きたくなった。

 

 

ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。比類なき“奥田ワールド”全開! 

 出典元:内容(「BOOK」データベースより)

 

読もうと思ったキッカケはドラマ

と、言ってもドラマを見ていたわけではない。なんとなく情報が入ってきたことはある。広末涼子さんと内田有紀さんが出演しているとか。佐藤隆太さんがDV夫を演じているとか。高畑淳子さんが面白い中国人社長をしているとか。

 

内容は全く知らなかった。でも、面白そうだなと思った。

 

「ナオミとカナコ」というタイトルもとてもキャッチーだ。「誰なんだろう」って思わせる。何も知らないからこそ、ナオミとカナコを知りたくて手に取った。

 

二人の成功を絶対的に祈ってしまう

最初はたしかに傍観者だった

最初は直美目線での物語を、ただただ見ているだけ。直美は百貨店で外商部の仕事をしている独身のOL、加奈子は銀行員の夫を持つ専業主婦。ただそれだけ。その二人の物語をただ傍観者として見ている読者だった。

 

徐々に感情移入しはじめて…

李朱美がやってきた頃からだろうか。徐々に直美に感情移入しはじめている。理不尽な態度に心の底から腹が立つし、だけど和解してからは楽しくもある。

 

加奈子が夫から暴力を受けていることを知った最初のときは、物語の流れとだけ。でも、段々と回数を重ねるごとに直美の怒りが私にも伝播していくのを感じていた。

 

いつのまにか共犯者になっている

二人が事をなしとげて、加奈子目線の物語になっている頃。私はすっかり二人の共犯者だ。どうにかバレないでくれ、どうにか二人が幸せになってくれ、どうにか逃げてくれ。

 

祈るように猛スピードで読み進めてしまうのだ。でも、それに気づくのは読み終わってから。やっと読者としての自分を客観視して、恐ろしい勢いで移り変わる自分の立ち位置に驚くのだった。

 

彼女たちを邪魔するものは悪で、救ってくれるものこそ正義

心底陽子が嫌い

読んでいるときに私は彼女たちの共犯者だから、彼女たちを邪魔する人たちが憎らしくてたまらなかった。加奈子の夫はまあ言わずもがな。

 

でも、最も腹が立ったのは加奈子の義妹(夫の妹)・陽子だ。彼女は自分のためだけにしか動いていないからだ。

 

加奈子が夫に奪われていた“自分”というものを、やっとやっと奪い返した。そして、それを大切にしようと思っているのに、ずっと“自分”だけを大切にしていた陽子が奪おうとする。

 

陽子が兄が失踪して調べようとするのは、“自分”が気になるからだ。両親や夫の妻(加奈子)のためではない。自分が納得したいだけだ。

 

陽子が加奈子に全てを知ったと告げるとき、なんと言ったか。

「死んでちょうだい」

と言ったのだ。そして、

 

なんであんたみたいな、たいしたキャリアも積んでない女に、わたしの人生を汚されなきゃならないのよ。

 

警察の取り調べでお兄ちゃんの悪口言わないでよ。それがあんたのするべきせめてもの償い。

とまで言う。結局は“自分”が汚されたことに怒っているだけなのだ。兄が殺されたことはショックだとしても、それは二の次なのだ。

 

そして加奈子を殴る。兄からDVを受けていたと知っている、加奈子を殴った。自分の兄がDVをしていたらと謝っていたのに、それも「自分の兄がDVをするなんて恥ずかしい」からなのだ。自分を汚した女を殴る権利は十分にあると思っている。

 

実は一番悪党なのではないか、とさえ思ってしまう。客観的に見れば、犯罪を暴こうとする姿は正義なのかもしれない。でも、私は共犯者だから陽子が心底嫌いなのだ。

 

いつのまにか李朱美が大好きになる

そして、逆に李朱美を好きになる。常識的にはありえない人だ。直美との出会いだって最悪だった。でも、好きになってしまう。2人を救ってくれるときなどものすごく頼もしい。

 

最後のシーンを終えて、ようやく「ほっ」と一息

物語のラストスパートではページをめくる手が止まらない。何とか逃げ切って、頑張れ。頑張って。大丈夫。あと少し。

 

そして、最後のページをめくり終えたときに、ようやく「ほっ」と一息つく。良かった、と。

 

たしかに読者はもう一人の共犯者

そしてやっと私は気づく。ああ、いつのまにか共犯者になってしまったなと。でも、読み終えて見届けたことへの充足感がある。この先のことは考えない。きっと、ここまでが二人の物語。どうなるのだろうと考えるのはきっと無粋なのだ。

 

どうしても二人が幸せだったと思って終わりたいくらいに、私は共犯者になっていた。

 

ドラマのような演出がなくても十分にハラハラさせられる一冊でした。素晴らしい。

 

でも、ドラマも見てみたいね。高畑さんの李朱美が秀逸という評判が気になります。

 

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