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【読書感想文】岸見 一郎、古賀 史健『嫌われる勇気』勇気を持てば人生は変わる、確実に

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人生はシンプルだ、とアドラー心理学では唱える。そんなわけがないと言いたくなる人こそ手に取ってほしいのがこの本。自分と同じくらい、いや自分以上にややこしい“青年”のある意味での正論を、“哲人”がアドラー心理学で解き明かしてくれるのだから。

 

読み終わったら、勇気を持ちたくなる。だって、勇気を持てば、人生が変わることに気づいてしまうから。

 

…怪しいセミナーみたいな文言になってしまった。アドラー心理学を人に語るとき、どうしてもうさんくさくなってしまう。自己啓発には怪しまれる資質があるのか。けれど、読んだ人にはわかってもらえるはず。たしかに、人生の見方が変わる心理学だと。

 

 ※ネタバレを含みます。

 

本書の内容

本書は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊です。欧米で絶大な支持を誇るアドラー心理学は、「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な“答え”を提示します。この世界のひとつの真理とも言うべき、アドラーの思想を知って、あなたのこれからの人生はどう変わるのか?もしくは、なにも変わらないのか…。さあ、青年と共に「扉」の先へと進みましょう―。

引用元:内容(「BOOK」データベースより)

 

感想

根源的な“哲学”の解き方

この本は人生を悩み、どう生きたら良いのかわからず、劣等感を持ち、ひねくれた性格の“青年”と、アドラー心理学を唱える“哲人”との会話で構成されている。二人の会話を読みながら、アドラー心理学の理解を深めていく。

 

昔の哲学者のように、問答法でとにかく議論に議論を重ねて、哲学を突き詰めていく。現代のカウンセリングの在り方の一つともいえるような対話法。

 

正直いうと、しょっぱなの「ふふふ」にいらっとして読むのをやめようとしたのだが、やめなくて良かったという感想を今は抱いている。

 

自己啓発本は元気なときに読むべし

正直、個人的に自己啓発本はあまり好まない。昔、学校に通えなくなった頃に、とある精神科医が書いた自己啓発本を手にした。悩んでいたので解決したいと手にしたが、あまり私の心には響かず、解決に至る手助けにもならなかった。一つも覚えている言葉がない。

 

子どもだった私は、自己啓発本に対して苦手意識を持つようにもなってしまった。必要以上に毛嫌いして、ちょっと小バカにしていた時期もあったように思う。

 

当時の私は、今のダメな自分の現状を打破する“答え”が欲しかったのだと思う。そして、おそらくはその本にも“答え”はあって、自分に消化できれば活かせてもいたのだとも思う。

 

ただ、メンタルが弱っているときは何事もマイナスに捉えてしまう。本に書かれていることも「そんなことできるわけない」と頭ごなしに思い込んでいるので、全て嘘のように感じられてしまう。

 

火が揺れているのではなく、自分が揺れているから、火が揺れて見えるのだろう。

 

そして、今回気づいた。もし、自己啓発本の何かしらを自分に活かそうと思うのなら、元気なときに読んだ方が良い。そうすれば意味を理解し、自分と相容れない部分も立場を入れ替えて理解しようと努め、自分に活かす方法を心得る。身につくように訓練ができるのだ。

 

そうすれば、悩んでメンタルが弱っているときになり、身についたことが生きる。悩みに直面しているときには直接的には役立たないが、何もない日常にこそ吸収し、いざというときに役立つ種類の本なのではないかと思う。

 

と、思える私も大人になったのかな、とちょっと自分を褒めておく。

 

人生観が180度変わる

アドラー心理学を知って感じたことは、今までの人生観や幸福論とは全く違う。私の今までの生き方からすると、180度異なる。

 

例えば、物事は原因があって結果がある、と思っていた。例えば、能力がないから仕事ができない。人見知りだから友達が少ない。お菓子ばかり食べるから太る。これが原因論。当たり前といえば当たり前の理論だ。

 

アドラー心理学は驚くことに原因論を否定する。全ての物事にあるのは原因ではなく目的だと説く。

 

仕事ができないと言い訳する目的で、自分には能力がないと思いたい。人間関係で傷つくのが怖いから、友達を作りたくないという目的で人見知りだと思いたい。ダイエットに向き合うのが面倒だという目的があるから、お菓子を食べて太る理由作りをしている。いわゆる目的論。行動や思いには原因ではなく、その先にある目的を見据えているというわけだ。

 

「こうだから仕方ない」という原因論が正しいとなると、じゃあ原因がある限り未来は変えられないのか、となってしまう。「その通り」と諦めている私もいることもたしか。しかし、生きているからには「そんなわけないよね」と思いたい。

 

アドラー心理学は、変えられない原因ではなく、世界を捉えている自分の存在に着目する。全ては主観だと。そして、主観は変えられる。だから未来もいかようにも変えられる。幸せにもなれると。

 

ただ、幸せのためには勇気が必要なのだという。アドラー心理学は「勇気の心理学」だというのが一つのキーワードで、タイトルで多くの人が惹かれた「嫌われる勇気」も勇気のひとつ。積極的に嫌われろというのではない。自分のために今を生きなさいと説いているのだ。

 

他にもいろんな言葉が出てくる。「自分の課題と他者の課題を分ける」「承認欲求を否定する」「自己肯定ではなく自己受容」「他者信頼」「他者貢献」…読んでない人にとってはちょっとうさんくさい言葉の羅列が続く。読むとそれを理解して、咀嚼できていることに気づいて、面白い。

 

他者を理解できるようになった

私がアドラー心理学を知って、人生が変わったとは思わない。正直、日常は同じだ。自分から見える世界が変わったというより、むしろ他者への捉え方が変わったと感じる。

 

自分と相容れない人がいると、今までは腹立たしく思いながらも「どうしてそんなことを言うのだろう」と価値観の違いを相手のパーソナルを知ることから理解しようとした。いわば、全く違う考えに至る原因を知りたかったのだ。つまり、原因論から他者を見ていた。

 

今は、「こういう目的があるからこんなことを言ってるんだな」という見え方ができるようになった。そうすると、相手の言い分に納得はできなくても、言いたがる目的は理解できてわかりやすくなった。つまり、目的論で見るようになった。人を見やすくなったのだ。

 

自分の中の感情の気づきとしても、「どうしてこんなことを思ったのか」と自分の目的を探ってみることもある。ちょっとずつ、見え方が変わってきているのだろうか。

 

だからって輝かしい未来があるわけではないけど、少しずつ自分の悩みへの解決法にも生かせば、変わるかもしれない。

 

気になった点

本書の中である例が気になった。家事をしない家族に対して、全部自分がやらなければならない。そんなときに、「どうして私ばかり」と思ってしまうということを、アドラー心理学は否定する。

 

きちんと読めばその論理はわからないでもないが、感情に寄り添えば正直家事をする側の味方になってしまう。こう言っては何だけれど、著者が家事をしない言い訳に使っているようにも感じられてしまった。私の思い込みの可能性が高いが。

 

自分の分の家事をやることは自分の課題で、自分以外の家事は他者の課題だと、家事を残しておくのも選択の一つかも、という提示もありでは?

 

「他者貢献だろ」と家事やってもらうことを押しつけて、間違った意味で使って、感謝を抱かない人間が出てきそう。褒められるためにやるわけじゃないけど、感謝を抱かない人と良好な対人関係を抱けない。こういう場合の解決法ってどうなのかなと気になった。

 

まだ哲人にはなれず

わかったように感想を書いてはいるが、正直理解しきれていない。とても易しい言葉で書いてあり、疑問点を一つ一つ解決してくれて丁寧で、なるべく専門的な用語を使わないなどわかりやすいことはたしかだ。取っつきにくいと不安な人は安心してほしい。

 

とはいえ劣等感と劣等コンプレックスの違いや、優越性など、今まで認識していた言葉の解釈とは違う意味で覚えておかなければならない言葉がたくさんあるので、インプットにはけっこう時間がかかった。

 

1回読むと、なんとなくわかった気持ちにはなる。たぶん、骨格はなぞってる。けど、その肉付きを深く理解している気がしない。

 

誰かに聞かれると、自分の中では概念として理解していることに気づく。ただ、他者にわかりやすく伝える言葉を組み合わせるのが難しい。相手が“青年”のように鋭い質問をしてきても、私は“哲人”のようにうまく返せず、まだきちんと理解しきれていないなと認識させられる。

 

理解するために、あと何度か読みたい。アドラー心理学を理解し、人生に生かすのには今までの人生の半分の時間が必要だという。あと十数年かけて、本当に世界の見え方が変わるかもしれないことに期待したい。それまでに勇気を持てますように。

 

 

aoikara

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